請求書は企業にとって自社の売上や入金に直結する重要な書類です。自社の商品やサービスの料金や代価について、支払いを求めるために発行します。
そのため、ビジネスの現場で頻繁に目にする機会が多い書類ですが、具体的にどのような情報を書いておくべきでしょうか。請求書の必要性と、正しい書き方や送付方法について解説します。
目次
請求書はなぜ必要?
請求書とは、商品やサービスを提供した際に、その対価を相手に支払って貰うために発行する書類です。金額や取引内容、振込口座、振込手数料などを明記した請求書を発行すれば、取引先の支払い忘れの防止にもつながります。
日々掛売りを行う企業であれば、その企業の締め日に合わせ1ヶ月ごとの取引でまとめていきます。この集計は納品書や受領書、検収書と付き合わせを行い、記載内容に間違いがないかを確認します。
請求書を発行することにより、対価を求めるととともに、取引先双方との金銭の授受の相互確認を行うことができます。取引先との認識違いを防ぐとともに、発生する支払いに関するトラブルなどが発生した場合には、「取引完了後にその対価を求めた証拠」にもなりますので、しっかりと請求書を発行していきましょう。
請求書は発行しなくてもよい?
結論から言ってしまえば、請求書を発行されず支払いを行っても問題ありません。その例の1つとして賃貸借契約を結んでいる不動産の賃貸料金です。日々の生活の中で、賃貸住宅の月額家賃支払いの請求書を受け取り、その書類を元に支払っている方は少ないはずです。
この他にも水道光熱費があります。クレジット決済や口座からの自動引き落としにしている方は、毎月決まった日付に決済が行われ、その日付の前後に引落明細などが届いているでしょう。
このようにふと日々の生活の中の取引に目を向けてみると、請求書を発行せずに金銭の授受を行っている取引は沢山あります。社会通念上の慣例の中で請求書が必要ないと判断できていれば、請求書は発行されないのです。これは双方の支払いに関する信頼関係が築けているからと考えてよいうでしょう。
会社取引では請求書が必要
請求書は必ず必要ないことが分かりました。しかしながら会社間の取引ではそうはいかないことがあります。税務調査への対応やその会社内で行われる社内監査への対策として、請求書が必要になってきます。
①税務調査
税務調査は約7年に1度ほど突発的に調査官が会社へ訪問し、申告書の内容と日次月次でまとめられた帳簿との整合性を確認し納税額に問題がないかを確認するものです。その中で更生すべき箇所があれば過去5年さかのぼって指摘され、必要に応じて追徴課税の納付を求められることになります。
この時に支払った金額、受け取った金額の証憑として請求書などが必要になることがあります。ただしあくまでも請求書「など」が必要になるのであって、請求書が必須ということではありません。この他に領収書や納品書、支払明細書など金銭の授受の根拠が分かる書類があれば問題ありません。極端な言い方をすると税務調査員が納得すればよいのです。
ただし、毎月の取引に対して請求書や領収書、納品書や支払明細書などが見やすく保管されていれば、税務調査員の心象も良くなりスムーズに調査を終えることができるでしょう。
②社内監査
近年、社内監査として「内部統制」が注目されています。その背景には、2006 年から施行となった新会社法において取締役や取締役会に内部統制システム構築が義務づけられたことにあります。これは会社内での粉飾決算を防止し、外部報告を行うための有価証券報告書などの正確性を保つためです。
このように書くと現場単位ではあまり関係のないようなことにも思えてしまいますが、日次業務を行う現場単位でも十分に起こることが考えられます。その代表的な例として、「社用の切手を個人利用として持ち出す。」「現金売上票を破棄し、その代金である現金を着服する。」「営業ノルマ達成のため、架空の請求を得意先へし、入金をしてもらう。」などがあります。
特に後ろ2つについては請求書のやり取りが関わってきます。このような不正を防ぐためにも、客観的根拠を高めるために請求書が必要になってきます。
請求書の受渡方法
請求書の受渡方法ですが、一般的に郵送で取引先に送る、もしくはPDF化をしてメールで送るケースが多いです。それでは渡し方にルールはあるのでしょうか?それぞれの方法のメリットや注意点を考えていきます。
①手渡しする
直接渡せるので、1番確実な方法と言えます。但し月次の締め日に必ず持参しなければならないので、他の業務とのスケジュール調整が必要になります。また1件の訪問に移動時間も取られるため、多くの得意先を受け持つ担当者だと、現実的に訪問できなくなります。
請求先の企業が遠方であった時も同じです。また昨今では新型コロナウイルスの予防を理由に、企業への訪問や対面を避ける傾向になってきてもいます。このことから、近隣で日々訪問しながら取引をしている企業に限って言えば、手渡しでもよいのではないかと言えます。
②郵送で送る
こちらが1番一般的な請求書の受渡方法でしょう。得意先毎の締め日に合わせ請求書を作成しまとめて郵送することにより、遠方の得意先に対しても円滑に請求業務を行うことができます。
ただし、請求書はビジネスの取引を証明する証憑書類ですので、第三者に内容を知られないようにしなければなりません。特に請求書は金銭のやり取りに関わるので、細心の注意が必要となります。請求書を郵送する際は、中身が透けにくい加工がされた封筒や、少し厚めの封筒を活用することもおすすめです。社用封筒を作成してくれる会社も沢山ありますので、自社に合ったものを選択すると良いでしょう。
また、企業双方の認識を事前にすり合わせておくのも良いでしょう。郵送した後に請求先から「請求書の中身が違う!!」と言われてしまうこともあります。
特に締め日当日の取引には注意が必要です。自社内では6月30日の取引だと認識し請求しても、請求先では7月1日の取引と認識しており、6月請求分ではなく翌月7月請求分に回してほしいと言われることがあります。
このような場合でも事前に請求内容を双方で確認し合っていれば、未然に防ぐことができます。特に締め日前後は社内処理の期日が迫っていたりもします。このようなことを理由に請求先での処理が遅れ、支払いが滞ってしまってはいけません。スムーズに取引を行うためにも、事前の認識の擦り合わせはしっかり行いたいものです。
③メールで送付する
近年主流になりつつある請求書の受渡方法として、メールでの添付ファイルでの送信があります。特に新型コロナウイルスの対策として多くの企業でテレワークが導入されました。
担当者は仕事用のパソコンを自宅に持ち帰り作業を行っているので、これまでのように請求書を郵送で送っていると、確認までに時間がかかってしまいます。これでは社内処理に時間がかかり、支払いが滞ってしまう可能性もあります。
このため近年では請求書をPDF化し、メールに添付して送付するという方法を採用する企業も増えてきているようです。この方法であれば送信してすぐに相手も内容を確認でき、そのデータのまま上長や経理担当者へ転送することができます。
しかしながら、このメールでの添付による送付にもいくつか注意すべきことがあります。まず1つ目にExcelやWord形式など編集しやすい保存形式で送らないことです。内容を請求先に勝手に変えられてはいけません。
次に、送信先を間違えないということです。請求書はビジネスの取引を証明する証憑書類ですので、第三者に内容を知られないようにしなければなりません。
間違えて異なる企業に送信してしまったら信用問題に関わってしまいます。一般的な対策として、請求書データはZIP形式などでパスワードをかけて送信し、別途そのパスワードをメールで送信する方法があります。2つのメールを送ることにより、誤送信の人為的ミスを防ぐことができます。
最後に注意しなければならないことは、電子印鑑を作成しなければならないということです。請求書には必須ではないですが、その請求書の発行元の角印や丸印が必要になります。PDFデータなどで送付する場合、あらかじめこの印鑑の電子印鑑を作成しておく必要があります。電子印鑑の導入時は面倒な作業もありますが、1度作ってしまえばずっと使えるものになりますので、作っておくのが良いでしょう。
④FAXで送る
最後にFAXで送る方法を紹介します。請求書などをFAXで送信することには法的には問題ありません。ただし社内監査などを理由にFAXでの請求書の受け取りを拒否する企業がほとんどだと思います。またFAXで送信すると、画質がどうしても粗くなってしまいます。細かい文字や数字などが潰れてしまい、請求金額などが正しく伝わらない可能性もあります。
また、原本保管の観点からもFAXでの請求書の送付はあまりオススメしません。FAXで請求書を送付すると、送信完了時に請求書の原本が請求元に残ってしまいます。原本保管を基本とする企業の場合、「請求書は届いているけど、原本は請求元に残っている」という違和感のある状態を嫌がります。
このようなことからFAXでの請求書の送信は極力避けたほうが良いでしょう。ただし締め日の関係から請求先が早く知りたいということであれば、1度FAXで送信し、その後郵送などで原本を送るのが良いでしょう。
最後に
いかがでしたでしょうか。請求書の基本的な考え方や必要な理由、そして請求書の送付方法の種類や注意点を紹介しました。請求業務は企業の運営に必須な事柄です。しっかり請求を行い、円滑に進めて頂ければと思います。